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コラム公開日:2025.04.24
近年、問い合わせ対応に対話型AIが利用されるようになり、急速に普及しています。対話型AIはどのような仕組みで動いているのか、問題はないのか、やっておくべき対策などについて解説します。
本記事では、対話型AIについて多くの方が抱いている疑問に対して回答します。対話型AIとは何か。どのような技術で成り立っているのか。導入するメリットとは? 懸念点にどう対策すればいいのか。といった疑問に対して詳しく説明していきます。
【 目次 】
対話型AIとは、人工知能技術を活用して自然な会話を実現するシステムです。ユーザーとの対話を通じて質問に回答したり、問題を解決したりすることが可能です。対話型AIは機械学習や自然言語処理(NLP)などの最先端技術を駆使し、人間が理解しやすい形で言語を解析・生成しています。
一般的な利用シーンとして、自治体や企業で問い合わせ窓口に導入されることが多くあります。住民や顧客からの質問に迅速に対応し、効率的な業務運営に寄与します。また、時間の節約やコスト削減だけでなく、顧客満足度の向上にも寄与します。教育分野やビジネスシーンなどでも活用されており、幅広いニーズに応じたサービス提供が期待されています。
対話型AIと生成AIは、どちらも人工知能を活用したシステムですが、目的や機能面で違いがあります。対話型AIは、ユーザーとの対話を通じて質問に答えたり、問題解決をサポートしたりすることを主な目的としています。対話を行う上で、自然言語処理が重要な役割を果たします。
一方の生成AIは、テキストや画像などのデータをもとに、新しいコンテンツを生成することを主な目的にしています。生成AIの利用例としては、文章の生成や画像の生成などがあります。生成AIは自動的に独自のコンテンツを作成し、業務効率化や創造性に富んだアイディア創出に寄与します。
対話型AIとチャットボットは、どちらもユーザーとの対話を通じて情報提供やサポートを行うシステムですが、その対応力や技術面で違いがあります。対話型AIは、機械学習を活用して自然言語の理解や対話の生成をするため、より人間らしい対話の実現が可能です。
一方のチャットボットは、主にプログラムされた質問パターンに対応して、定型的な回答を提供します。そのため、対話型AIに比べて柔軟性が劣り、未知の質問や柔軟な会話には対応しにくいといわれています。対話型AIはチャットボットをさらに進化させたものであり、対話の質や対応力が向上しています。
対話型AIを構成する主な技術は自然言語処理(NLP)と呼ばれており、それを自然言語理解(NLU)と自然言語生成(NLG)が支えています。これらの技術の組み合わせによって、人間とAIの円滑なコミュニケーションが実現されます。
自然言語処理(NLP)とは、人間が日常的に使う言語を機械が理解し、処理する技術です。人間が使う言語には、さまざまなニュアンスや会話法のバリエーションがあり、AIが深層学習(ディープラーニング)を行い、継続して多様な言語のパターンや意図の表現方法を認識する必要があります。学習を繰り返しながら、人間が話す言語を正確に理解する技術がNLPです。
自然言語理解(NLU)とはNLP の一部であり、人間が使う言語の意味をコンピュータに理解させる技術です。主にテキストや音声データを解析し、その内容や文脈を把握することが目的です。具体的には、単語の認識、文法解析、意味の抽出などが行われます。NLUの技術は、チャットボットやスマートアシスタントなどのAIシステムで活用されています。それにより、ユーザーからの質問や要望に対して適切な応答を返すことが可能となっています。
自然言語生成(NLG)は、NLPのもう1つの主な要素です。人間が理解できる自然言語のテキストを、AIが自動的に生成する技術です。データ分析やレポート作成、顧客対応など、多くの業務で活用されています。具体的な使用例としては、チャットボットがユーザーからの質問に適切な回答を生成したり、機械学習を用いて大量のデータから自動的に要約文を作成したりする機能が挙げられます。
対話型AIが導入される理由は、効率向上や人手不足の解消、顧客満足度の向上など、さまざまなメリットがあるためです。ユーザーや企業にとって、AIの活用は非常に重要な要素となっています。
対話型AIが自治体や企業にもたらす最大の利点の1つが、人手不足の解消です。特に問い合わせ対応などの業務において、AI は時間やコストを削減し、労働力を効率的に分散させることができます。
たとえば自治体で対話型AIを活用する場合、「年始の営業開始日はいつか」「公共施設の利用予約はどうすればいいか」といった簡単な質問に自然な会話で回答・解決し、専門的な対応が必要な場合だけ自治体の担当者に引き継ぐことが可能です。
対話型AIに定型的な問い合わせ対応業務を任せることにより、企業や自治体は人材をより重要な業務に集中させることができます。
対話型AIの導入により、業務効率の向上とコスト削減につながります。具体的には、AIが人間のような会話を行い、顧客からの質問に迅速かつ適切に回答することで、自治体や企業の担当者にかかる負担を軽減できます。これまで問い合わせ対応に割いていた、人件費や教育コストを削減できるようになります。自治体の場合で考えると、行政計画の策定や住民との直接対話が必要な業務に人員を配置できるようにもなるでしょう。
企業におけるカスタマーサポートや、自治体の制度やルールに関する問い合わせ対応に対話型AIを導入すると、顧客満足度の向上が期待できます。さらに、多言語対応が可能なAIを導入した場合、異なる言語での質問にも対応でき、より多くの顧客や住民のニーズに応えることが可能となります。
また、24時間対応できるため、営業時間に縛られずいつでも顧客が求める情報を提供できます。これにより利用者満足度が大幅に向上し、企業や自治体への評価も向上するでしょう。
対話型AIの導入により、業務の属人化を排除できます。問い合わせに対してAIが統一された回答をするため、個人の能力や認識範囲、考え方による回答のブレがなくなります。また、AIは過去の履歴を分析し、過去の質問と回答のパターンから学習できるため、知識の継承も容易になります。
対話型AIは便利ですが、個人情報の取り扱いや回答内容の正確性など、懸念を感じる方も多いでしょう。ここでは、対話型AIにおける懸念点や、リスクを低減するために講じるべき対策例をご紹介します。
まず、対話型AIの回答は必ずしも正確でない場合があります。
その理由は2つあり、1つ目がAIの自然言語処理能力が低い場合です。採用しているNLU技術が未熟である場合や、PDCAを適切に回せない製品の利用は、リスクがあるでしょう。しかし、ディープラーニングの仕組みを利用者側がチェックすることは難しいです。そのため、利用シーンを想定して実際に質問を投じてみて、どの程度の回答が返ってくるかのチェックを行いましょう。それまでどの程度の精度向上が行われてきたのか、評価する指標になります。
2つ目は学習データの質です。NLU技術が優秀だったとしても、学習すべきデータが不十分では、期待する効果を発揮できません。AIが適切に学習できるよう、ルールやガイドラインの設定やデータの整備が必要になります。たとえば自治体における条例やルール、想定される質問に対する回答集などを事前に用意する必要があります。
また「間違いが1つでもあってはならない」という完全なる正確性をAIに求めても、それに応えるのは難しいことも理解しておきましょう。それは人が対応したとしても、回答の間違いや伝え方にブレは発生しているためです。それよりも、記録したログをもとにPDCAを回しながら回答精度を高める運用体制を検討するほうが効果的でしょう。
個人情報保護やセキュリティについては、AIを利用する際に非常に重要な問題です。特に、名前や住所といった個人を特定する情報の取り扱いには注意が必要です。たとえば住民が、自分の住民税納付状況を自治体に対して問い合わせてきたときの対応を、AIに任せるのはリスクがあります。なぜなら、個人情報をAIに入力しなければ回答ができないためです。AIが学習した個人情報は、悪意ある攻撃によって流出する恐れがあります。
このようなリスク対策は2種類があります。1つ目は、対話型AIの活用シーンを限定することです。個人情報入力が不要なものに限定し、さらに個人情報を話さないように注意喚起を行います。もう1つは、セキュリティの強化です。対話型AIに対する高いセキュリティを施したり、記録するデータベースへのセキュリティ対策を行ったりします。
対話型AIの話し方は、技術革新によって自然さが増しています。しかしどうしても、会話が淡泊で冷淡に感じる人もいるかもしれません。その対策として、人型の顔のアバターを駆使すれば、質問者の感情を一定程度和らげる効果があります。また、AIに任せきりではなく、はっきりした回答が決まっていない質問については事前に洗い出し、その場合は職員が迅速に対応するようなルール設定、体制を敷いておくことも大切です。
対話型AIのメリットは大きいものの、懸念点を持つ方も多いため「本当に導入しても大丈夫なのか」といった異論は必ず出るでしょう。だからこそ、導入を検討する際には正しい知識を身につけ、関係者に適切な説明を行うことが大切です。
エイジェックでは、自治体や企業における対話型AIの導入支援を行っております。2025年4月に、対話型AIツール「そうだんAI-Te」をリリースします。直観的な操作で誰もが簡単に利用可能であり、質問者はAIによるストレスフリーで平等な対応を受けることができます。
また、神奈川県海老名市と共同で、対話型AIの実証実験を実施しています。市の業務効率化と、住民の利便性向上の効果を確かめるものです。こうした実証実験などの取り組みを通して、「そうだんAI-Te」の精度向上に取り組んでいます。
「まずは対話型AIがどんなものか知りたい」、「実際の費用対効果はどの程度か知りたい」「実際に導入する際、どのように内部を説得するのか」といった疑問をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。
AIが行政窓口を変える!海老名市とエイジェックの実証実験がスタート
https://www.agekke.co.jp/16184/
海老名市:市長定例記者会見資料
市の窓口業務で「対話型生成 AI」を活用した実証実験を開始
~市民のサービスの革新と業務効率化を目指して~
https://www.city.ebina.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/611/shiryo1.pdf